ネギで窒息

  • 18:42

その日は梅雨明け宣言の出た次の日の、空には雲ひとつ無い快晴で、日傘を持つ女性をよく見かけるようなとても暑い日だった。試験を終え、お腹が鳴ったので学食へ行き、こういうときにこそ熱いものを食べるのが美味いのだと信じ切って、食券のうどんのボタンを押した。
私はうどんは噛まずに飲み込むのが普通と思っている人なのだが、やはり熱いものは一気に食べようとすると舌や喉を火傷しそうになる。なので少しずつ食べていたのだが、事件はつゆを飲もうとした時に起こった。
私「あちちっ…ずずずずっ………げほっ!」
突然の咽頭反射でむせてしまい、その後暫しの間、呼吸困難に陥る。友の視線が冷たい。
友「大丈夫?」
私「…!(死ぬ寸前、というジェスチャー)」
友「大袈裟だなぁ…ほら」
私「…ごふっ!」
友に背中を叩かれて私は咳き込み異物を吐き出した。
死ななくて良かったと呼吸の出来る喜びを噛み締め息を吸ったり吐いたりして深呼吸していたのも束の間、吐き出された物を見て、友も私も絶句した。


其処にあったのは横着をして板から剥がさずに切ったかまぼこの如き、切れずにつながった巨大なネギの塊であった。
本当に死ぬかと思ったので食堂のおばちゃんを問い詰めたい衝動に駆られたが、友の功績によるところが大きいが、結局死ななかったし、突発的であったとはいえ、生きている事の素晴らしさを再確認させられたし、それに怒るのは疲れるし体力を消耗するので、これ見よがしにネギだけ残すに留めて帰ることにした。

暫くはうどんはネギ抜きにしようと思う。


not dead