誰に言うともなく

あの子が新しい彼と付き合い始めた。それでも僕らは前みたいに電話をしていて、眠るまでの数時間を笑ったり泣いたり疲れたり溜息吐いたり歌ったりして過ごす。互いの声が好きなので今は他意もない。寝付きの悪いあの子が眠るのに大体2時間とちょっと。いつか僕が電話中に眠ってしまったことを思い出すと可笑しい。電波の悪い部屋を出て近くの自動販売機の隣で、前の自分からは考えられないほどに縁遠くなっていた風邪の気配を感じた。僕は嬉しい。