生きる為に必死なんだ

空腹を覚え、揚げたての唐揚げ弁当を買い、ぶらりと帰る夜道。鼓膜を揺さぶる旋律の合間に猫の声が聞こえる。はて。立ち止まりヘッドフォンを外し見渡す。煩いくらいに鳴いている野良の三毛猫を一匹見付ける。いつもやるようにしゃがんで近付こうとすると警戒する様子もなく猫まっしぐらで身体を擦り寄せ始めた。ガサガサと音のするビニール袋に近寄ってニャー?(なにこれ?)と鳴く猫。これ?だーめ。あげないよ。ニャー!(おなかすいた!)と叫ぶ猫。怖くなったので立ち上がってみる。ゥニャー!(なんかくわせろ!)と追いかけてくるので、そんな腹減ってんのかしょうがねーなーと言いながら民家に近くない位置まで離れたとこまで一緒に移動してから唐揚げをひとつ取り出して、ほい、と置いてやる。キョロキョロして、こっち向いて、ニャー!(はやくくれよ!)と繰り返す。えぇー、置いたんですけど…、ほら、そこに…と指差すとニャー?(これ食えんのか?)と指に向かって噛みついてこようと…。指を引っ込めて、いや、そうじゃなくて、そこにあるよ…じゃあ、俺行きま…。フシャー!(逃がさんぞ!)と足にジャンプ攻撃を繰り出す猫。アイタタ。ガサガサ音を立てる袋を追いかけてニャー!(ここからいいにおいがする!)とギラギラした目を向けてくる猫。ビニール袋で気を逸らしつつ、置いた唐揚げを回収!猫の口の前に差し出す。すると、無言で唐揚げを銜える。が、揚げたての唐揚げなので猫は猫舌をホフホフいわせて夢中で食べ始めた。その隙に、じゃあ達者でな、と帰ってきました。おかげで今日は唐揚げが一個少なかった。でも笑顔が二つ増えた。