逢いに発つ

隣に座った物腰の柔らかな若々しいおばあちゃんに話しかけられて、たくさん話したよ。
富士山がとてもよく見えた。今まで何度か通った場所なのに一度もこんなに綺麗に見えた例しはなかった。そこにはいつだって確かに在ったのに、見えることすら知らずに見落として、でもこうして見れたのがとても不思議だった。こうして話してることだって、不思議だと思った。一期一会。
その方は函南から清水の娘さんを訪ねてからお墓参りに行くそうで、富士山談義をたくさんした。見える窓と反対側の席だったので写真が撮れなかったのが残念なくらい。でもきっと写真なんかじゃ薄らいでしまう気もする。
田子の浦を後ろの人がひがしだ、このうら…?とか言っててこれはひどいと思ってたら百人一首のひとつを詠んでくれました。博識な。
富士山の形が角度によって変わるという当たり前のことに改めて気付いた。裾野が広いなあと言ったら夏場は雪が無いのであまり広く見えないんですよと教えて下さった。夏は靄がかかって霞む為に冬ほど綺麗に見えないんだとか。電車は富士山を廻るように進みやがて後ろになって見えなくなった。
由比の海も綺麗で吃驚した。
あと、行き先の案内板(?)のオレンジのラインの下の矢印の間に(静岡市清水区)とか書いてあるのを不思議に思っていたのだけれど、由比はさくらえび日本一の町で、それで食べていけるから清水区になるのを頑と拒否して由比町の儘だという話を聞いた。飛び地で清水区に挟まれているのが面白いなあと思った。僕は地名に明るくないので、そう言うとこういうのも好いでしょう?とにこやかに返されて、すてきなひとに逢えたなあと思った。
清見寺が好いところだと聞いた。春先は桜も綺麗だと聞いたので機会があれば行ってみたいと思った。社交辞令なんかじゃなく。
楽しかったです。さようなら。って言われてなんかもうどうしようもなく胸が苦しくなって悲しくなった。どんだけ寂しがり屋なんだと自分を笑うしかなかった。