シラノ・ド・ベルジュラック

あらすじを紹介する。

舞台は17世紀フランス。武勇に並ぶ者のない天下無双の剣豪、シラノ・ド・ベルジュラックはそれだけでなく博学多識、才気煥発、湧水のように豊富な詩の才能を持っていた。だが、その鼻は巨大で異形であり、故に醜い男として蔑まれていた。しかし豪放磊落、口を衝くのは大言壮語、へそ曲がりで熱く気性の荒い彼はそれを悲しく見せない陽気さがある。
シラノは幼馴染で従妹のロクサーヌを愛していたが、容姿のコンプレックスに依る自信の無さから思いを伝えられずにいた。友人に励まされ決意を胸にロクサーヌに会いに行ったシラノだが、ロクサーヌがガスコン隊の同僚(部下)であり親友のクリスチャンに恋していることを知り、手助けを頼まれてしまう。
容姿端麗な美男子クリスチャンは口下手だったため、詩才豊かなシラノは恋文の代筆をし、ロクサーヌに送ることで二人の仲を取り持った。しかし恋が実ろうとしたとき、あろうことかクリスチャンは戦死してしまう。

この先や結末は、本なり映画なり演劇なり各々の方法で知って欲しい。

シラノ・ド・ベルジュラックはパリ生まれ、1619-1655に生きた実在の人物で、詩人、小説家、自由思想家、剣客、軍人と多くの肩書きを持っていた。
そのシラノを主人公に、劇作家エドモン・ロスタン*1が1897年に書きあげた戯曲こそがシラノ・ド・ベルジュラックである。フランス語の原作はとても美文だと聞くが未だに読めずにいる。いつか原作で読んでみたいものだ。


得意げに書いてみたが、僕が初めてシラノ・ド・ベルジュラックを知ったのは手塚治虫の漫画だった。ブラック・ジャック第162話『気が弱いシラノ(Weak-Willed Shirano)』である。ここではシラノは白野、クリスチャンは栗須という名前になっていたりして面白い。手塚治虫七色いんこ第17話『シラノ・ド・ベルジュラック(Cyrano de Bergerac)』でもシラノを主題に一作描いている。演劇に興味がある人は七色いんこを読むと好いと思う。

また、余談だが、稲垣浩監督・三船敏郎出演の『ある剣豪の生涯』(1959)や『無法松の一生』(1958)は時代劇版シラノ・ド・ベルジュラックと言われているらしい。

*1:Edmond Rostand[1868-1918]